経験豊富なスタッフによる、新しい挑戦
JOSUKEのプロジェクト第4弾としてリリースされた『蜉蝣』(かげろう)のミュージックビデオ(以下MV)が完成した。
サウンドはAKB48や嵐などの楽曲も手がけるクリエター集団ハイキックエンタテインメントが担当し、これまでのJOSUKEの楽曲群を踏襲するエレクトロポップとなった。
アレンジャーを務めたYocke(ヨッケ)は、アニメ『シュタインズゲート』のオープニング曲『ファティマ』(いとうかなこ)や、ダンス&ボーカルグループSUPER☆DRAGONの楽曲などを数多く手がけており、ミックスを行なった滝澤武士はシンガーソングライター槇原敬之と長く仕事をしてきたベテラン。経験豊富でありJOSUKEの求めるサウンドへの親和性が高いスタッフが集結した。
「こういった申し分のないキャリアを持った、メジャー楽曲を手がける方たちにお願いするとどんなクオリティになるのか関心があったんです。ちょっと実験的な試みではありますよね。どんな仕上がりになったか、みなさんにもぜひ確認してもらいたいです」
ひと夏の恋を、命の短い蜉蝣に
『蜉蝣』も、これまでの『夢の中で』『セレナーデ』『花化粧』と同様に2005〜2008年に活動していたバンド、SINSEMILLAの楽曲を再アレンジしたもの。名前も知らない相手とのひと夏の恋をテーマとしており、その思いを命の短い「蜉蝣」に重ね表現している。
「次にリリースする曲を考えていたとき、好きな自分の曲を改めて振り返ったんです。そして浮かんだのが、前作の『花化粧』とこの『蜉蝣』でした。季節感もちょうどいいですしね。メロディもきれいだから、JOSUKEサウンドにリアレンジしたらどうなるかという興味が強かったのも理由です。もちろん、思い出もたくさん込められている曲ですしね」
そう本人が語るように、この楽曲はJOSUKEが20代のころ、当時思いを寄せていた女性や友人たちと福井県の水晶浜に行ったできごとがヒントとなり誕生した。そのため、MVでも同じ場所で撮影が行われている。
大量の資料をもとに、あらゆるイメージをふくらませる
自ら監督も務めるJOSUKEのクリエイティブは、いつもイメージ作りから始まる。白い砂浜と透き通った海の蒼さ、そこに落ちる美しいサンセット。頭の中には地中海のような風景が浮かんでいた。
「衣装は『VEDUTA』の浴衣と決めていたので、海岸の風景と組み合わせたらすごくかっこいいんじゃないかと、パッと浮かびました。それが僕の記憶の中の水晶浜にハマったんですよね」
JOSUKEは自らを「変態的」と表現するほど、リファレンスや資料の作成に時間をかけている。今回もさまざまな映像資料を参考に、素材をMADムービーのように自ら切り貼りして、イメージをふくらませていった。
「時が経ち大人になったJOSUKEが、昔を思い出しながら歌うようなイメージにしました。回想シーンのカットインには『VOCE』専属モデルをされている松原菜摘さんに出ていただき、思い出の中の美しい女性を演じてもらっています。お会いした瞬間は思っていたよりも顔つきが幼かったのですが、メイクをしてカメラの前に立つとものすごく大人っぽくて、イメージ通りの女性が現れたんです。プロのモデルさんのすごさを感じましたね」
大人になったJOSUKEだからこそ実現した表現
撮影はトータルで 14時間にも及んだ。前日、前々日と雨が続いていたが、当日は奇跡的に天候にも恵まれたという。
「翌日からまた嘘のように雨が続いてました。きっと、その日しかイメージしていたものは撮れなかったと思う。前日にロケハンをしたんですが、浜に踊り場のようにでっぱった場所があって、そこのロケーションがすごく良かったので撮影にも使っています。夕陽がこれ以上ないくらいにきれいに出て、最高の映像に仕上がりました」
若きころに紡いだ曲を、年を経て新たな視点から再構築するJOSUKEのソロプロジェクトも、本作で4曲目となる。
「SINSEMILLAでやってきた曲を、JOSUKEとして再び世に出すことは、SINSEMILLAからアートリーまで続いていることの証明でもある」
かつてJOSUKE自身がそう語った意味が、より深く理解できる作品に仕上がっただろう。
大人になったJOSUKEだからこそ表現できた、儚くも鮮烈な恋の記憶。
『蜉蝣』は新たなアレンジとともに、新たなコンセプトをもって蘇ったのだ。
(文:森野広明/編集:田島太陽[BLOCKBUSTER])