2005〜2008年に活動していたSINSEMILLA時代の楽曲を再アレンジという形でリリースしたJOSUKE。
今回のプロジェクトでキーワードとなっているのが、男らしさを意味する「マスキュリン」だ。
人によって浮かぶイメージは千差万別だろうが、JOSUKEが思い描いたのは、センチメンタルで甘く、激しさや荒々しさとは違った男らしさ。
JOSUKEが生み出す楽曲の魅力、JOSUKEが目指す音楽について迫った。
いまの時代に合ってなければ
JOSUKEが音楽活動を再開するに当たって、第1弾のリリースに選んだのは、SINSEMILLAの代表曲だった『夢の中で』。もちろん当時の音源をそのまま出したわけではなく、バンドサウンドだったアレンジは、エレクトロテイストなポップスに生まれ変わった。
その理由をJOSUKEはこう話す。
「僕は単純に“いい歌詞、いいメロディー”を作りたいだけなんです。ただ、いまの時代に合ってなければかっこよくない。それで今回のプロジェクトの制作チームで打ち合わせをしていたときに、外にアレンジを出してみようということになったんです」
アレンジで魔法をかけられたサウンド
「いままで自分たちが聞いてきたロックだけではなく、違うジャンルもインストールして、チャレンジしてみたかった。いろいろな方にアレンジをお願いしましたが、そのなかでも菅原一樹さんのアレンジを聞いたときに、自分のなかで“ハマった”感じがしたんです」
菅原一樹は広告映像や企業イベントのBGM制作などを数多く手がけてきた作編曲家。
いわゆるバンドシーンとは異なる世界を主戦場としているが、国際広告祭でも受賞歴を持つ彼によって魔法をかけられたサウンドは、JOSUKEが今回のプロジェクトで掲げた「マスキュリン」というキーワードと合致した。
「エレクトロポップって、かわいい系に寄せようと思ったら、簡単に寄っちゃうじゃないですか。だけど菅原さんがアレンジした『夢の中で』には、男らしさを感じたんです。それに、細かいビートが刻まれていたり、電子音で歪んでいたり、聞き方によってはロックに近いなと思っていて。必ずしもロック=バンドではないと思うし、ロックな感じのデジタルサウンドにしていきたいんです」
変化したのはサウンドだけではない。菅原の引き出した楽曲の持つロマンティックな世界観を活かすため、JOSUKEも歌い方を大胆に変えた。
「以前はビジュアル系からの流派というか、Hydeさんなどに影響を受けて、ビブラートを効かせて歌うことが多かったんです。だけど今回は、バンド的な歌い方ではサウンドと合わない。それでボイトレにも行って、ポップスの歌い方を模索した結果、できるだけストレートに歌うことを心がけました」
みんな悲劇のヒロインを演じたがる
『夢の中で』は当時大学生だったJOSUKEの実体験が基になったラブソング。
レコーディングにあたって改めて楽曲と向き合い、歌詞に描かれたストーリーの主人公を意識的に演じた。
「恋愛が始まるときの気持ちを歌った曲なんです。フラれたらどうしようとか、告白するのが怖いとか、不安もありながら、ワクワクする気持ちというか。節々で当時の情景を思い浮かべて、シミュレーションしながら歌ってましたね」
JOSUKEは「ワクワクする気持ち」と言ったが、その歌声はセンチメンタル。
「切ない気持ち」のほうが適切に感じるが、それについて説明するJOSUKEの言葉は、実に説得力のあるものだった。
「やっぱり誰もが愛されたい自分を持っていて、悲劇のヒロインを演じたがるというか。“切ない=誰か見て”みたいな(笑)。みんな深層心理で思っていることだと思うんです」
普通なら否定したくなるようなことをあっさりと認め、「ノーフィルターで表現できるのが、歌のいいところ」と語ったJOSUKE。
第2弾としてリリース発表された『セレナーデ』、年明けに第3弾としてリリースされる予定の『花化粧』も、恋愛映画のようにドラマティックな主人公の姿が描かれている。
「特に『花化粧』に関しては当時の思いがこもっていて。付き合っていた女の子がいたけど、僕に新しく好きな人ができちゃったんです。歌詞はだいぶ手直ししたんですけど、純粋に“好きだ”っていう感情を大切にして、きれいな感情ときれいな情景が伝わるように気をつけました」
「あんまり汚れてないので」
SINSEMILLA時代は20歳前後だったこともあり、「“好きだ”とか、“楽しい”とか、気持ちをそのまま表現する歌が多かった」と言う。
しかし、バンド解散から10年が経ち、いまはより洗練された言葉で表現できるようになった。
今後はラブソングだけでなく、“成り上がりたい!”など力強い男らしさを歌っていた曲も、いまの解釈でやってみたいと話す。
ここでひとつ気になったことを質問してみた。年をとったことで、若いころのような尖った気持ちは薄れてないのだろうか?
「そこは変わっていない気がしているんです。自分で言うのもアレですけど、あんまり汚れてないので(笑)」
年齢を重ねるにつれ、丸くなったと感じる人も多いと思うが、それをきっぱりと否定した。
少年のような気持ちを持ち続ける彼は、この先どんな歌を届けてくれるのか。
Part3に続く。
(インタビュー・文:タナカヒロシ/編集:田島太陽[BLOCKBUSTER])